『エロスは甘き香り』

だらだら。暑い。


桃井かおり主演の日活ロマンポルノ『エロスは甘き香り』を眺める。
実験映像一歩手前のアヴァンギャルドな演出。
『ポルノ』というジャンルの中で炸裂する強烈な作家性。
当時のポルノ映画の世界は、セックスさえ描いていれば監督の自由な
創作が許されたとはよく聞く話。実際どうなのかは知らないが、
過激な性描写への制限と予算以上の制約があるようには見えない。
おそらく限界ギリギリなまでの低予算であろう制作環境下、
ロケを行わない密室内撮影で、濃密かつ複雑怪奇な人間模様を濃縮
させるテクニックは現在に至るも『SAW』などに観る事ができる。
日活の烙印こそ押されているが、まさしくインディペンデントフィルム
の形態そのものである。




劇中の前衛的な屠殺シーンに至っては、マカロニの残酷モンド映画
影響によって撮られた物か知る由も無いが、1973年公開の本作、
まさしく『地獄の黙示録』のクライマックスシーンを彷彿とし、時代を先取りした演出。
(「地獄の黙示録」の生贄シーンもモンド映画の影響とも言われているが。)



ダイレクトな快感を追求したアダルトビデオに駆逐された『映画』としてのポルノは、かくも先鋭的。


監督は『野良猫ロック』『修羅雪姫』の藤田敏八。脚本は押井監督の『紅い眼鏡』にも
影響を与えた『荒野のダッチワイフ』の大和屋竺。お二人ともすでに故人。
助監督に『太陽を盗んだ男』の長谷川和彦が参加。


エロスは甘き香り [DVD]

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夏のかけら―藤田敏八との七年間

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