「ゴッゴル学園48時間」

第二話:「史子様と生徒会長・砂智湖=スチェッキン


ごきげんよう、史子さま」

史子・ゴッゴル・伊藤三世は生徒たちにまぎれて校内を散策するのが大好きだった。
史子を見ると学園内の女生徒たちはみんな、顔をやや紅潮させながら挨拶をする。




生徒たちの間で、史子は「気に入った生徒がいると一夜を共にさせる」という噂が信じられていた。



同性愛。甘く切ない、禁断の愛のスタイル。儚く散り去る運命の、女同士の背徳の性愛。
少女たちはそれが禁忌と知りつつも、淡い官能の幻想を胸に抱き、史子が誘う快楽の世界を夢想していた。
誰もが史子に見初められるのを心のどこかで期待していた。



史子は生徒たちに愛されていた。史子はすべての生徒たちの姉であったが、同時に片想いの恋人でもあった。



史子は自分を慕うそんな生徒たちが大好きだった。



十代の少女たちの清楚な肉体に秘められた、自分へと向けられる劣情を敏感に感じ取る史子。
未知なる官能に胸を高鳴らせる生徒たちが、可愛くて可愛くてしかたなかった。




ごきげんよう。みなさん」


生徒たちに囲まれて、挨拶を返す史子。  
朝、自らの手によって絶頂を迎えた史子の性器から、再び愛液が溢れ出す。
少女たちと語らい触れ合うだけで、史子は性器が透けるほどにショーツを濡らしてしまうのだ。
先刻はき替えられた下着は、すでにオナニーで果てた朝とほとんど変らないまでに愛液を吸い込んでいる。
白い生地が含みきれない史子の官能の雫は、黒いストッキングに覆われた太腿の肉壁を伝い始める。


いとおしい妹たちの中、史子の下半身が微かに震えた。


オナニーがしたい。
史子の自慰への欲求は、半ば日常化された自然現象のようなものだった。
尿意をもよおすのと、劣情をもよおすのはほぼ同じような感覚みたいだ。




『気に入った生徒がいると一夜を共にさせる』



史子は見境なく自らの学園の生徒たちと関係を持つ事はなかった。
まったく無根拠の噂話というわけでもないが、一時の劣情の捌け口に女生徒たちを抱くという事は
しなかったのである。



いとおしい妹たちの、清純ながらも艶かしい乙女の仕草を目に焼き付けた史子は、生徒たちが集い歩く
銀杏並木から離れ、《新校舎》から、足を《旧校舎》へと向ける。



旧校舎。築85年。創始よりある木造校舎であるが、現在は一部の教室を除いて使用されていない。
史子はここに忍び込み、誰もいない空き教室でするオナニーがこれまた大好きだった。


旧校舎の教室は、ほとんど使用されていないものの綺麗に清掃されていた。
旧校舎を愛する生徒たちが、定期的に掃除をしているのだ。
彼女たちの想いが生きているので、旧校舎は朽ちる事も無くその姿をいまも留めている。


旧校舎に入り込み、自らを慰める教室を物色する史子。



「?」



ふと足を止める。
微かにピアノの旋律が聴こえた。


「誰かいるのかしら?」
足音を殺し廊下を進む史子。
鮮明になるピアノの音色。



ピアノが奏でる旋律は、「月光」だった。


音楽室をそっと覗き込む史子。


そこにはピアノを弾く、生徒会長:砂智湖・スチェッキンがいた。



第2話完。つづく。